診療理念
私たちの診療理念は
「安心して家で過ごすための診療」
を提供することです。
それには
①普段からの患者さん及びご家族との信頼関係の構築と対話 ②医療者間での情報共有と対話
が必要だと考えています。
私は患者さんの診察で難しい判断を確かめる時に決まって行う考えがあります。
それは、目の前の患者さんをより身近な存在だとして考え、「自分の親や祖父母だったらどうするか」と自身に問いかけることです。
そうすることで、患者さんお一人おひとりが、そしてご家族の皆様が「安心して家で過ごすための診療」を受けることができると信じているからです。
さて、私は在宅医療に関わってまもなくして最期の時を家で迎える方が意外に少ないことに気付きました。
普段、在宅で診療しているのにその方々の半分もおられないのです。
元気な時に最期の時を想像することは難しく、本人の体調が悪化し判断できる状態ではなくなった時に、ご家族としては病院で診てもらうという選択肢を選ばざるを得なくなるのでしょう。
なぜならご家族の急激な体調の悪化を突然目の当たりにした時、今後の診療方針についてご家族が難しい判断を冷静に選択することは困難だと思うからです。
もちろん病院に行くというのは正しい選択肢の一つであることに間違いはありません。
しかしながら、私たちは住み慣れたご自宅で最期を迎えたいという患者さんまたはご家族のご希望を最大限に尊重、実現していきたいと考えております。
そのために私たち医療者が普段の診察からご本人やご家族と信頼関係を築き、日々の付き合いを通して大切にしている想いを感じ、お元気な時に自分や自分の家族のことのように十分に対話をしていくことが重要なのではないかと思います。
大切な想いを共有できた先に「安心して家で過ごすための診療」を叶えることができるのだと考えております。
在宅医療はご自宅という密室で行われる医療です。
多くの現場では治療の判断をするのは主治医のみであることがほとんどです。
自宅という超個人的な場での診療では他人から見られることがありません。
そのためプライバシーが高く守られるものの、主治医の思い込みのみで方針は大きく変わってしまい、修正することは難しくなってしまうこともあります。
例えば病院では他人から見える診療なので、修正可能な機会は多くなります。
私自身は自分の診療にもちろん自信がありますが、それでも思い込みはあるかもしれません。
訪問診療の現場で本当は治る見込みのある病気が主治医の思い込みで諦められていたのを目にしたことがあります。
しかしそれは、主治医以外の他人の目が入ることで方針が変わり、治すことができることもあるのです。
ある意味、自分1人で考えていたことが他人の意見を聞いたことにより、解決するということは医療に限らず普通によくあることです。
個人の判断による偏りを防ぐために当院では院内で患者さんごとの診療方針を共有しつつ、経験豊富な特定の院外スタッフにも情報共有を行うことで、診察の透明化と柔軟性の担保を積極的に行っていく体制にしております。